聴く
ビルマ・ポップス
●歌謡界の女王
  「メースウィ」
May Sweet
  ・プロフィール PROFILE
  ・ディスコグラフィ DISCOGRAPHY

●ビルマ・ロックのヒーロー
 
「レーピュー」
Lay Phyu
  ・歌謡界の現状
  ・J-ASEANで来日
  ・東京でのライブ
  ・「レイッピャー」の訳詞

●ビルマ・ポップス界の大御所
 「キンマウントー」
   Khin Maung Toe

●ポップス界の草分け的大スター
 「サイン・ティーサイン」
   Sai Htee Saing
  ・ディスコグラフィ DISCOGRAPHY

■ビルマ・ポップスについて■

   シンセサイザーが奏でる軽やかなイントロ。ヤンゴンのテープ屋で手に入れた人気歌手のミュージック・テープは、こんな出だしで始まりました。親しみやすいメロディーのさわやかなポップス。歌詞がビルマ語であることを除けば、特にこれといったビルマらしさは感じられません。すると途中で曲がいきなり転調。軽快なメロディーは俄然ビルマっぽくなり、バックの演奏には伝統音楽で使われるさまざまな打楽器がにぎやかに登場。歌手もこぶしの利いた歌声で感情いっぱいに歌います。何だこれはと思っているうちに、曲は再び軽快なポップスへ。ビルマ・ポップスを聴いていると、ときどきこうした意表を突くような曲に出会います。

   ビルマ・ポップスには、伝統音楽に深く根差したものから洋楽の影響を大きく受けたものまでさまざまなスタイルがあります。例えば、伝統的なスタイルとして、ビルマ独特のメロディー・ラインがあります。これを「ミャンマー・タンズィン」といい、日本の歌謡曲の場合で言えば、演歌調という感じのとらえ方ができるでしょう。もちろん音楽的に演歌そのものとは違います。ただ、こぶしの利いた節回しという点で両者には共通点があると言えるかもしれません。実際ビルマ人は演歌とミャンマー・タンズィンには一脈通づるところがあると少なからず感じているようで、日本の演歌は結構人気があります。

   ただビルマでの流行という点で言えば、一番人気は洋楽スタイルのポップスです。特にロックンロールやカントリー調の曲が好まれているようです。また最近は、結構ヘビーなロックを聴く若者たちも増えてきています。こうしたポップスはビルマ語で一般に「キッポー・テーギータ」といわれて、その大半は外国の曲のビルマ語カバーです。曲は原曲のメロディーをストレートにコピーしたものなので、音楽的なビルマらしさいったものはあまり感じられません。ただ、この国のポップス業界の現状からすれば、こうしたあまりにもストレートなコピーこそが「ビルマらしさ」と言えるような状態にまでなっています。つまりコピー曲の氾濫が歌謡界の現状であり、その中でオリジナルの新曲が少なくなってきているということです。また一方ではビルマ・ポップスならではの独自性に満ち溢れた以前のヒット曲も、スタンダード・ナンバーとしてずっと歌い継がれています。これもひとつの流行となっており、こうしたリバイバル曲のことを「ピャンソー・テー」といいます。

   このリバイバル曲はビルマ人の手によるオリジナル曲(ビルマ語で「コーバイン・タンズィン」という)であり、この国ならではの音楽的なおもしろ味は、こうした「コーバイン・タンズィン」の中から感じ取ることができます。例えば、洋楽スタイルと思わせておいて途中で「ミャンマー・タンズィン(ビルマ調メロディ)」があらわれるといった展開。このパターンの曲はだいたい1コーラス終わったあたりで転調しますが、中にはイントロのあと突如、ということもあります。初めて聴くと何やら妙な感じもしますが、耳に馴染んでくると面白さと心地よさが湧き上がってきます。異質な音楽の融合が放つ音の快感とでも言ったらいいのでしょうか。ビルマ・ポップスにはそんな不思議な響きがあるのです。

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