レーピュー & IRON CROSS J-ASEAN POPsで来日
※レーピューについての他の記事
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 ●東京でのライブ(12月22日)報告
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■レーピューの人物像について

 レーピューは自身の性格について、短気で気が変わりやすいと語っています。そして、その喜怒哀楽の激しさは細君も認めるところ。そんな「アーティスト肌」の彼ですが、業界における人間関係の重要性への心得からでしょう、他の歌手に関するコメントについてはとても慎重。ほとんど何も語りません。これはこの国の報道事情とも無関係ではなさそうです。

 ビルマのマスコミ界は、政府発表がその頂点にあり、民間については、現在、新聞発行が禁止されています。許可されている雑誌なども、検閲によって、情報そのものを正確に発信しにくい状況にあります。こうした面が報道そのものの「質」にも及んでいるようで、特に芸能関係の記事にはかなりの不正確さが見られます。たとえば業界随一を誇る雑誌『マヘーティー』は、ヤダーゾウンといわれる「総合誌」の老舗として、この国で最も良質な雑誌のひとつです。しかしそこですら、架空のインタビューを日緬合作映画『血の絆』関連の記事として大々的に掲載しています(2003年6月号)。記事の中では、ビルマから来日した記者が、主演新人女優麻生あかりと彼女のビルマ語教師キン氏の二人と会って、質問したことになっています。しかし、そのようなインタビューは一切行われておらず、またビルマ語教師はマヘーマー氏で、キンという教師は実在しません。

 芸能関係における一種の「創作」報道は、特に日本と大差ないのかもしれませんが、これに加えて、マスコミの機能が制限されているビルマでは「口コミ」という更に不正確な噂話の影響力が強大です。それだけにレーピューとしても、他の歌手について、うかつなことは言えないのでしょう。

◆◆◆リーダーのいないアイロンクロス◆◆◆

 レーピューは基本的に他人の企画ではアルバムを制作しません。だからオムニバス・アルバムも、何かの記念といった類の特別な意義が見出せない限り不参加だそうです。そんなこだわりを持つレーピューは、アルバム制作の際、作詞作曲の担当と一緒に相談しながら、自身で手を加えたりして、自分が求める曲作りを進めます。そしてさらにアイロンクロスのメンバーをも交えて、共同作業で自己の音楽を完成させます。

 こうした動きから、彼がアイロンクロスのリーダーのような感じがしますが、実際このバンドにリーダーはいません。というのも、要はその必要がない、ということのようです。アイロンクロスは業界で1・2を争う人気バンドですが、常にグループ単位で活動をしているわけではありません。メンバー各々が実力者であり、個々で独自の活動もしています。つまり彼らは、固い結束というより、むしろ互いの尊重によって無理のない形でまとまっているようです。よって5人のメンバー全員が違う民族同士というのも、どこか象徴的な感じがします。レーピューはインダー、チッサンマウンはカレン、ドラムのカランは華人、ベースのキンマウンタンはチン、キーボードのバニャーナインはモン。うがった見方をすれば、全員非ビルマ民族であることが、互いの尊重を可能にする対等な関係につながっているのかもしれません。

 ちょっと話は飛びますが、ビルマ人の日本人に対するご挨拶のひとつに「日本人は勤勉、ビルマ人はのんびり」といった内容のきまり文句があります。ご飯食べた? どこ行くの? と同程度の意味合いでしょうから、深く考えることもありませんが、レーピューの口からこのフレーズが出てきたときにはちょっと考えてしまいました。とにかく彼は「のんびり」でない人物だからです。細君いわく「せっかち」とのこと。確かに、性格が出る車の運転から何気ない動きまで、彼女の言う通りのようです。考えてみたら彼はビルマ民族ではなくインダー民族(右の「リーダーのいないアイロンクロス」参照)。「のんびり」は、あるいは他人事として言っていたのかもしれません。いずれにせよ動きに緩慢さのない彼ですが、終始忙しくしているのかと言えば、そうでもありません。実は大の喫茶店好き。よくお気に入りの店で音楽仲間たちと歴史や政治経済などいろいろな話題で花を咲かせているそうです。要するに彼にとって、仲間たちとの人間関係は大切であり、かつ楽しいもの。よってそういう時はゆっくりと過ごすが、そうでない場面には時間をかけたくない。仕事も、こだわる部分にじっくり時間をかけても、実務的なところでは素早く実行に移す。そんな手際の良さを備えている彼は、ビルマ・ロック界の頂点に立つスターでありながら、ロック以外の様々なことに興味を持っています。

 これについてたずねてみると、とにかく「やりたいことはたくさんある」そうです。具体的に挙げれば、音楽プロデュースを始めとして、映画製作、画廊や喫茶店の経営などなど。自己のアルバムづくりにおいても制作から配給まで全て自分で手がけているだけあって、単に関心があるだけでなく、既に他の歌手のアルバム配給にも関わっています。このように自ら制作して流通にもたずさわるレーピュー。ファンは彼の魅力のひとつとして「リスナーをとても大切にする」点をしばしばあげます。そんな彼だからこそ、その姿勢の根底には、表現の自由が規制されているこの国の音楽事情の中で、流通面においてより手軽に多くの人たちが音楽を楽しめるようにしたい、という考えがあります。

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