ガソリン(及びディーゼル)はカーライセンス(車両所有許可証)を持つ者のみが、1日に3ガロン(約13.5リットル)、1ガロンあたり180チャットで買うことができた。実際は、当然それだけでは足りないので、闇ガソリンが広く流通しており、これによって人々の生活や経済活動は支えられている。
闇の卸元は軍人。軍人には毎月ガソリンが配給され、その量は階級が高いほど多い。高級軍人へは使いきれない程の量が配給されるので、余剰が市場にまわる。この国では様々な場面で「プエザー(仲買人)」が活動しており、高級軍人の部下などがまずここと話をつける。1ガロンの公定価格は180チャットだが、ガソリンなら230チャット、ディーゼルなら280チャットといった相場で卸される。プエザーはそれぞれに30チャット程をさらに上乗せをして闇小売業者に卸すので、最終的な闇市場価格は公定価格よりも100~160チャットほど高くなる。なお闇小売業者は、プエザーを通さず、直接軍人と取引きすることもある。
これは公然と行われているが、当然法律違反。警察による取り締まりがあるが、卸し元の軍人はその対象外。ただ警察の取り締まりは、摘発のためではなくプエザーや闇小売業者からの賄賂が目的。定期的に地域と担当官を決めて摘発しない取り締まりを行う。こうして、高級軍人、警察、プエザー、闇小売業者は、闇ガソリンの流通によって生活の糧を得ていく。