この手の色彩のトラックは、ビルマで意外とあまり見かけない。

貨物運送業は、基本的に長距離バスと同様の運営形態がとられています。長距離バスにおける「旅客」を「貨物」に置き換えて考えれば、かなり大雑把ではありますが、その運営についての骨格を理解することができます(「長距離バス」の項を参照)。

まず基本的な事柄としては、政府当局から認可された「ライン(営業運行ルート)」においてのみ運送が可能、という営業についての大原則があります。たとえば、マンダレーからヤンゴンヘ貨物を運送するには、「マンダレー-ヤンゴン」というラインの認可を当局から取得しなければなりません。したがって、このラインから外れる場所への運送は、「密輸」ということになります。

個人経営と会社経営からなるこの業界において、「ライン」は、個人が単独で取得できるものではありません。これが可能なのは、地域の個人経営者で組織された「モートイン・アティン(貨客輸送自動車組合)」、あるいは会仕組織だけです。したがって、運送業を営もうとする者は、会社を立ち上げる、あるいはモートイン・アティンに加入し、そこで既に取得済みのラインを利用する、という形をとらなくてはなりません。

貨物運送業における運営の中身については、モートイン・アティンも会社組織も基本的に同様です。近年、運送会社の設立に増加傾向が見られますが、主流はモートイン・アティンにあります。そこで以下、こちらを例にとって、業界の運営方法をごく大雑把に記します。

モートイン・アティンの運営は、3~5年に1回行なわれる選挙で選出された会長と副会長および五人委員会という計7人の役員からなる「統括委員会」によって執り行なわれています。ラインの取得をはじめ、運送料金などの運営規則といったすべての事柄をこの委員会が決定し、下部組織として設けられた「マタタ(車両監視委員会)」が、現場でその決定事項が守られているか否かのチェックを行ないます。なお、これはヤンゴンの市バスにおけるマタタ(鉄道運輸省路線運輸行政局の下部組織)と同一名称ですが、別組織です。

加入している個人経営者は、毎月会費を支払うことで営業を行なうことができます。この会費は定額ではなくラインごとに設定されているので、利用するラインが多いほど、会費は高くなります。現場の運営は、こうした会費をもとにライン単位で行われており、それに伴うさまざまな業務は、各ラインに設置された「ゲイッ」という下部機関がその一切を執り行ないます。

以上のようなシステムのもとで営業を行なう各業者は、個人経営といってもその規模はもちろん一様ではありません。貨物トラック一台だけを所有し自らハンドルを握って運送業務を行なう小規模経営者もいれば、数台の車両を所有し、運転手を雇っての経営体制をとる業者もいます。こうした貨物運送業の経営内容については専門的な事柄が多くてわかりづらいので、これ以上の深入りは避け、以下は業界事情とその周辺を垣間見ていくこととします。