■第3期(2008年頃~2019年現在)
リトルヤンゴンの縮小とコミュニティの変化

2003年から5年間の「共同宣言」によってミャンマー人は減少の一途をたどっていましたが、その終盤に差し掛かったころから、就学ビザ(現在は留学ビザに統合)での来日が増加し始めました。そして、底を脱した感のある08年5月、本国ミャンマーが未曽有の大災害に見舞われました。

「ナルギス」と名付けられた大型サイクロンがヤンゴン近郊の南部デルタ地帯を直撃し、14万人近くが犠牲となったのです。これに対して在日ミャンマー人は、被災者支援をためのチャリティーイベントを次々と開催。かつてないほどの頻度でビルマ人歌手の来日公演が実現し、祖国支援を機に活気を失っていたミャンマー人コミュニティは、活動を活発化させていきました。

そうした流れの中で09年4月、ミャンマー人の心の拠り所であるテラワダ仏教(大乗部仏教)の僧院が人々の寄付によって中板橋に建立されました。それまでマンションの一室内にあった僧院が、ミャンマー文化福祉協会の運営によって単独の建物に移されたのです。またミャンマー人経営の店も高田馬場駅周辺を中心に少しづつ増え、そんな回復の兆しが見えてきたところで、さらにその流れを大きく後押したのが、本国において2011年から始まった民主化の動きです。

ミャンマー政府の対外開放と諸外国からの制裁解除をはじめとする国際社会における状況の劇的変化が相まって、来日するミャンマー人はぐっと増えます。出国に必要なパスポートが正規の手続きで発給されるようになったこともあり、在留者数は第2期の全盛期を超えるほどとなっていきます。そして在留資格については、かつて大半を占めていたと思われる超過滞在から技能実習、留学、派遣社員といった正規の資格を持つ若者が主流となり、こうした人たちが、ミャンマー人コミュニティにおける多数派となっていきました。

共同宣言による5年間の一斉摘発と本国における民主化は、ミャンマー人コミュニティに変化をもたらしましたが、その最たるは、コミュニティ内における世代交代です。その結果、在日ミャンマー人の人数自体は第2期の2倍ほどに拡大していますが、リトルヤンゴンはむしろ縮小しているという変化までを引き起こしています。高田馬場近辺にはミャンマー料理店が数多くありますが、その数はやや減少傾向にあるのです。(※注:ネット上においては、facebookなどのSNSを活用してた形でのコミュニティーが広がっている。)

現在(2019年4月)営業している料理店は下記の11店ですが、2~3年ほど前の17店から6店も減少しています。さらにここで着目すべきは、閉店したのが客層として日本人をあまり想定していないミャンマー語カラオケ可の店であるという点です。

2~3年前は17店中の12店がカラオケ可でしたが、現在は11店中の5店のみ。その5店も、カラオケ目的の客が多いのは3店にすぎないのです。これは、コミュニティにおいて、在留資格の安定した若いミャンマー人に世代交代したことと決して無関係ではないでしょう。つまり新世代のミャンマー人にとって、週末の集いの場は、かつてのようにリトルヤンゴン一辺倒ではないようです。

もうひとつの変化は、結果的に高田馬場への一極集中が進行したという点です。以前は、歌舞伎町から新大久保あたりまでの一帯は第2のリトルヤンゴンとも言えるほど関連の店がいろいろありました。しかし共同宣言以後、この地域はほぼ壊滅状態となり、現在(2019年)に至っています。(※現在、第2のリトルヤンゴンといえるのは大塚駅周辺だが、ここも減少傾向にある)

最後に、本国の民主化と関係しつつ、コミュニティの世代交代に伴う重要な変化と言えそうなのが、新世代女性の活躍です。

ミャンマー人コミュニティにおける組織といえば、民主化運動、少数民族組織、宗教関連といったところが中心でした。しかし、近年は新世代ミャンマー人が中心となって、親睦、交流、就職情報、自己研鑽などを目的に、留学生や社会人を結ぶ組織がいくつか活動を展開しています。主なところでは、MYSA(在日ミャンマー青年学生協会)MASBO(在日ミャンマー留学生&社会人組織)などがあり、特徴的なのは、その活動において女性たちがリーダーシップをとって活動しているという点です。もちろん男女ともに協力し合っての活動ですが、女性たちの活躍がとても目立っています。

在日ミャンマー人は、留学生や社会人だけでなく、さまざまな人々がいますから、ここに書かれたことだけがすべてではありません。そして状況は、今後も変化していくことでしょう。

リトルヤンゴン高田馬場のミャンマー料理店

現在(2019.4)

1.ルビー
2.ミンガラバー本店
3.ミンガラバー駅前店
4.スィウミャンマー
 (スエミャンマーと発音)
5.さくら
6.ヤンゴン
7.M3
8.ノングインレー
9.ババヌードル
10.ヤーマニャ
11.油そば力

以前(2015~17年頃)

1.ルビー
2.ミンガラバー本店
3.ミンガラバー駅前店
4.スィウミャンマー
 (スエミャンマーと発音)
5.さくら
6.ヤンゴン
7.M3
8.ノングインレー
9.ババヌードル
10.ヤーマニャ
11.油そば力
12.東京レストラン
13.チェターヤーリン
14.シュエオー
15.ミャンマーユワー
16.マリカ
17.ナカンムエ(MUSTACHE)

中板橋僧院で行われている在日ミャンマー男性たちの一時出家(写真は2017年4月)
日比谷公園でのダヂャン(2019年4月)
長年シュエタイッだった「京や第2ビル」のミャンマー料理店も2018年には全て閉店に