「麺」というのは、本来的な意味でいえば、小麦粉を原料とするものだそうです。しかしここでは、小麦粉に限定せず、日本で使われている意味合いのものを「麺」とします。

細めのうどん程度の「ナンヂー」。柔らかめのスパゲッティといった感じでもある。

ミャンマーで主に使われている麺としては、米粉が原料の「モンバッ」、主に小麦粉が原料の「カウスエ」、はるさめ風の「チャーザン」などがあります。調理方法は、スープをかける、あえる(トウッ)、炒める(チョー)といったところです。

 まず、モンバッについては、太さによって次のような種類があります。

  • 「ナンデー」…細い(そうめん程度)
  • 「ナンラッ」…中位(太めの中華麺程度)
  • 「ナンヂー」…太い(細めのうどん程度)
  • 「ナンビャー」…細めのきしめん風
アヒルの卵、バナナの茎、ガペー(魚のすり身揚げ)などが入った「モヒンガー」。麺類であっても「箸」を使わず食べる点が、中華料理と認識される他の麺料理との違い。れんげで予め麺を短く切り、それをすくって食べる。店によっては既に麺が切られている。

モンバッを使った麺料理といえば、まずは「モヒンガー」(語源についてはこちら)が筆頭にあげられます。ミャンマーの代表的麺料理でもあるモヒンガーは、魚をベースとするスープの汁麺。麺はナンデーやナンラッが使われ、揚げものなどをのせて食べるのが一般的です。汁なしものでは、分類としては「和えもの」の方に入るかもしれませんが、きな粉などを使って和えた麺のアトウッがあります。このうち、ナンヂーを使ったものを「ナンヂードウッ」、ナンヂー以外のモンバッを使ったものを「モヒンガードウッ」といいます。なおミャンマーではさまざまな種類の麺料理がありますが、和えものを除いたところでは、その多くが一般に中華料理として認識されており、モヒンガーのようにはっきりと「ミャンマー麺料理」と言えるようなものは、むしろ少ないといっていいでしょう。

●モヒンガードウッ(モヒンガーの和えもの)

  カウスエは小麦を原料とするものですが、実際には米が原料であってもカウスエという表現がしばしば使われます。これは、「カウスエ」が「麺」と同様、麺類全般を指す言葉となっているからです。したがって米の麺という意味での「サンカウスエ」という表現があり、そういったものとの区別で、本来のカウスエをあえて「ヂョウンカウスエ(小麦麺)」という場合があります。なおサンカウスエと言われるものは、少数民族であるシャン民族の麺料理「シャンカウスエ」を指すことが多いようです。

   そんな幅の広い「カウスエ」を使った料理は、大部分が中華料理の部類に入りますが、数少ないミャンマー料理としてあげられるのが「オンノカウスエ」です。これは「モヒンガー」と並ぶ代表的ミャンマー麺料理。ココナッツミルクを使ったスープのラーメンで、まろやかな甘さと口当たりが特徴です。使われる麺は、単に「カウスエ」といわれるやや縮れた中華麺。これには乾麺の「カウスエヂャウ」と生麺の「セッカウスエ」とがあります。また、モヒンガーと同じ魚のスープを使った汁麺として「カウスエアイェービョー」がありますが、アニャー(上ビルマ)料理と言えそうなこの麺料理は、ヤンゴンあたりではあまり見かけません。

きしめん風のカウスエビャーを使った「スィーヂェッカウスエ」。この手の汁なし麺はこの国の一般的な麺料理で、種類もいろいろある。

   汁なしのカウスエでは、調味料と油で味付けした「スィーヂェッカウスエ」などがかなり一般的に食されていますが、こういったものはやはり中華料理と認識されています。したがってそれらを除くと、汁なしものはここでも和えものということになります。使われる麺は、中華麺タイプの「カウスエ」だけではなく、「カウスエビャー」といわれるきしめん風の麺もあります。これは「カウスエロウン」、あるいはアニャー方面では「チェイカウスエ」とも言われるもので、幅や厚さはきしめんの半分ほどの縮れ麺。これらを使った和えものとしては、「カウスエドウッ」などがあります。また汁なしという点で言えば、「カウスエヂョー」といわれる焼きそばもここに含めることができるでしょう。外見や味は日本のソース焼きそばと似ていますが、調味料として使われているのはトマトソースではなく、「タヨウッ・ペーガンピャーイー」という一種の醤油。これは「中国の豆醤油」という意味で、甘味のある濃厚な味は日本の醤油とはかなり異なるものがあります。

 はるさめ風の「チャーザン」にもいろいろ種類があります。大別して、小麦粉が原料の「ペーチャーザン」はミャンマー料理で、米粉が原料の「サンチャーザン」なら中華料理で使われます。名称にペー(豆)がついていても原料は豆でないペーチャーザンはあえもの(「チャーザンドウッ」)やスープなどで使われます。なおスープには、辛めの「チャーザンヂェッ」、辛くない「チャーザンヒンヂョー」などがあります。