MM(2019年8月店名変更)※旧マハー KARAOKE(2010年2月1日開店)

■ミャンマー度100%のKARAOKEレストラン

近年、日本のミャンマー料理店を取り巻く状況には二つの傾向があります。ひとつは、日本人のミャンマー料理に対する認知度のわずかな向上。もうひとつはミャンマー料理店の減少傾向。一見矛盾するような二つの傾向と相まって、リトルヤンゴン高田馬場のミャンマー料理店におけるカラオケ設置率は、3、4年ほど前の7割から現在は4割程度にまで低下しています。料理と会話を楽しみたい通常の日本人客にとって、カラオケはしばしば来店を断念させる要因となります。ミャンマー・カラオケを歓迎するのはミャンマー人と日本人ならその種の愛好家だけ。客層を同胞に重心を置いた経営は、ミャンマー料理店にとって難しくなってきているようです。

そうした状況下、第二のリトルヤンゴンとも言える大塚でも、ミャンマー料理店は全盛期と比較して減少傾向にあります。しかし、この地域の経営姿勢は概ね同胞に重心を置いた従来の形。今年(2019年)の8月に店名を改めた「MM」は、その典型と言えそうなミャンマー度100%の店。日本人の来店も若干増えてきているようですが、客層はほぼミャンマー人。日本人客増加の対策を講じる気配はありません。「対策」は、講じることで得るもののあれば失うものもあります。カラオケに重点を置いたこの店(大塚にあるもう1軒も)に、日本人客対策を講じる必要性は見受けられません。

ということで、客のほとんどはカラオケを楽しむためにこの店にやってきます。そんなカラオケ料理店MMの凄さは、料理は二の次、とは微塵にも感じられない点。それどころか、メニューの豊富さ、味の良さ、手際の良さ、価格の手ごろさにおいて、匹敵する他店を探すのは困難と言えるほどです。

ミャンマー料理は、特筆すべき特徴としてアトウッ(和えもの)の豊富さを挙げることができます。料理の位置づけとしてはサイドディッシュということになりますが、アトウッ抜きにミャンマー料理は語れません。そしてMMはカラオケ料理店ですからいわば飲み屋であり、アトウッは酒の肴として最適。それだけで何と23種類ものメニューを揃えており、そして嬉しいことにその半分以上が420円という良心的価格。通常800円くらいはするラペットウッ(漬け茶葉の和えもの)もこの価格。生姜やさつま揚げ等の定番はもちろんのこと、バズンヂン(発酵エビ)、タイェッチン(発酵マンゴー)、ガヤンヂャウッ(干し雷魚)、ミィンクワユエ(馬蹄草)などのちょっと珍しい食材や、そして何とチャウンシャーディー(ソリザヤノキの実)のアトウッまであり、これは驚き。ビルマ語で「猫の舌」、タイ語で「青い舌」を意味するこの野菜は、その名の通り長い舌のような実。日本のミャンマー料理店でこれを常備している店はめったにないでしょう。

アトウッの他には、500~650円の炒め物が17種類、700円の麺類が11種類、800円のヒン(カレー風煮込み)が7種類などなど。そして魚介類の料理が750~1000円で18種類もあり、その中には和名すらない珍しいミャンマーの魚もあります(あの大野徹先生の辞書にも「海水産の魚の一種」としか書かれていないガポウンナーなど)。またカエルの炒め物もあり、これほど豊富な種類の料理をカレン人の店主マ・ティダーさんがひとりで切り盛りしているのもまた驚き。

大人数で行けば本当にいろいろな料理が楽しめるでしょう。そしてミャンマーポップスに挑戦してみるのもいいかも。1曲100円で歌えます。注意点であると同時に利点とも言えそうなのが営業日。通常営業は金~日および祝日のみ。月~木はぶらりと行っても営業していません。ただ電話予約すれば店を開けてくれるとのこと。つまり貸し切り状態。カラオケなしで料理と会話を楽しむなら、平日に予約するのがいいでしょう。

※店の場所(地図)はこちら

(2019年10月取材)

店名 MM(2019年8月店名変更、旧マハー KARAOKE※紹介記事
所在地 豊島区北大塚2-17-4 ライオンズマンション大塚第2 102
電話番号 090-5545-0138
営業時間 月~木は予約のみ、金~日・祝17:00~26:00
休業日 年中無休(条件付き)
所沢では居酒屋も経営するMM
20名以上入れる店内
インゲンのように見えるのが刻んだチャウンシャーディー、ほのかな苦みがアクセントの大人の味
豚の皮付き三枚肉を使ったウェターヒン、ミャンマー料理の王道