■国名表記について

世界各国には、他国の名称に対して、国際的な正式名称(英語)とは異なる独自の慣例的呼称があります。

例えば日本について、国際的には「ジャパン」ですが、各国にはそれぞれの言語における慣例的呼称(「リーベン」(中国)、「イープン」(タイ)、「ニャッパン」(ベトナム)など)があります。また日本にも他国に対して、アメリカ合衆国に対する「米国」、グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国に対する「イギリス」あるいは「英国」、ネーデルラントに対する「オランダ」といった独自の呼称があります。

さて、このウェブサイトで取り上げている「ミャンマー連邦共和国」を正式名称とする国について、わが国では長らく「ビルマ」という呼称が使われてきました。これは、オランダ語の「Birma」に由来するものと言われています。ところが近年は「ミャンマー」がすっかり一般的となり、若い世代の場合、「ビルマ」を知らない、あるいは旧名称だと思っている人が一般的です。これは、よく「ミャンマー(旧ビルマ)」といった具合に、ミャンマーが新しい名称であるかのように表現されているからでしょう。しかし、本来二つの名称の間に新旧はないのです。

ビルマ語には文語と口語の区別があります。そして国名について、元来この国では、長きにわたって文語では「ミャンマー」、口語では「∗バマー」と表現されてきました(∗日本語の「ビルマ」はこれに由来)。したがって文書等では、当然のことながら文語で「ミャンマー」となるわけです。ただしこれは国内に限ったことで、国外に対しては、英語の「Burma」を使用していました。

1989年、当時の軍事政権が国外に対する「Burma」という言い方を「Myanmar」に変更しました。そしてこれが、単なる国際名称の変更にとどまらず、国内におけるビルマ語の「口語」の国名までも変えてしまったのです。政府は口語において「バマー」ではなく「ミャンマー」を使用し、以来、口語としての「ミャンマー」が社会に浸透していきました。しかし、これを決定した軍事政権に政治的な問題が存在していたため、わが国において、この国の名称として、「ビルマ」を使用するか「ミャンマー」を使用するかで、政治的スタンスが判断されるようになりました。

当ウェブサイト『バダウ』におきましては、2001年における開設にあたって、国名について次のように考えました。日本には、例えば「米国」や「オランダ」といった独自の名称が慣例的に使用されています。そうした状況に沿って、ミャンマー連邦共和国についても、慣例的に使用されている「ビルマ」としよう、と。

軍事政権が国際的な国名の変更宣言を行っても、日本はそれに従う義務はありません。「米国」や「オランダ」といった国名と同様に「ビルマ」を慣例的な国名として使用し続けることができます。しかし我が国の政府は、これを「ミャンマー」に変更し、学校教育においても「ビルマ」は歴史上の旧名称として扱われるようになりました。そうしたことから、日本では若い世代を中心に「ミャンマー」が浸透し、さらに2011年の民政移管、2016年のNLD政権成立といった具合に政治状況が大きく変化し、国名として「ミャンマー」を使用することが、ごく一般的になっていきました。

本国では、本来文語であった「ミャンマー」ですが、軍事政権下で口語としても徐々に浸透していき、アウンサンスーチー氏も、英語で話す際は「Burma」であっても、ビルマ語では「ミャンマー」を使用するようになりました。また「ビルマ」と「ミャンマー」の違いについて、ビルマ人はしばしば「『ニホン』と『ニッポン』の違いと同じようなもの。どちらも自分たちの国名だ」という具合に説明します。

当ウェブサイト「バダウ」はこれについて、日本における慣例的呼称を基本方針としました。2001年の開設時は、「ビルマ」が慣例的呼称と言える状況でした。しかし現在では「ミャンマー」がそれにとって代わったと言っていいでしょう。したがって、今回のリニューアルにあたっては、基本的に「ミャンマー」を使用しますが、「ビルマ」そのものが正式な名称の一部となっているような場合(「ビルマの竪琴」、「ビルマ語」など)においてはその限りではありません。