■日本社会のいじめと差別

JMCCは、当初、ミャンマーが好きな日本人を対象にミャンマー語教室やミャンマー文化の紹介イベントなどを続けながら、豊島区や新宿区の教育委員会の依頼で小学校での日本語初期指導員をしたり、各方面の求めに応じて通訳や翻訳などの業務をこなしながら、東京に暮らすミャンマー人向けに日本語クラスをボランティアベースで提供してきた。

民主化後は、IT系、医療系、エンジニアの派遣会社や技能実習生として来日する若い世代が多く、ある程度の日本語力はつけてから来日するが、職場で十分なコミュニケーションをとるには不足していたり、祖国とは異なる日本文化や仕事の考え方にとまどいを感じる人も多く、日本で自信を失ったり、不安を感じる場面も多いという。日本語の指導だけでなく、メンタルケアも含め、日本社会にとけ込むための橋渡しをし、「ギャップを埋める」役割をJMCCは果たす。

毎週日曜日には、日本で生まれ育った、あるいはミャンマーから来たばかりの子どもたちに向けて、子ども会も開催。ふだんの日本人社会の中では、自分がミャンマー人であることを忘れたり、意識的に話さずに暮らしている子どもたちだが、ここへ来ると自分と同様の境遇にある子どもたちがいることで、ミャンマー語を学び、ミャンマー文化に触れ、アイデンティティを取り戻す、そんな1日となっている。

何より日本社会の中で暮らすミャンマー人の親は、子どもたちの勉強を見てやれないことも多い。JMCCの子ども会は塾がわりとなって、子どもたちの学習を支援し、学校から持ち帰るプリントの翻訳なども手伝う。(現在は主にオンラインでの開催)

JMCCの子ども会。ミャンマーから来た子どもたちへの学習支援が中心だったが、次第に日本で生まれた子どもへの「ビルマ語学習」へのニーズが高まっていった。

「新宿区は、多文化共生センターがあるというのに、いじめが多いんです」とマヘーマーさんは言う。異文化のちょっとしたすれ違いの間にはさまれ、つらい目にあう子どもたちを手助けしたい。また、大人も同様だ。病院等でも、アジア人に対する差別を肌で感じることがある。ある産婦人科でミャンマー人妊婦に同行したことがあるが、若い女性医師が、カタコトの日本語で話す妊婦に対し、「羊水」「体動」などわかるはずのない医学用語を多発し、しかもマヘーマーさんに通訳する時間を与えず一方的に早口でしゃべり、意思疎通を気持ちが伝わってこないこともあるという。

「完全に上から目線です」。

エピソードを聞いていると、腹が立つばかりでなく、日本人として、本当に情けないというか申し訳ない。自分がミャンマー旅行中には、出会った現地の一人ひとりのミャンマー人の笑顔に触れ優しくしてもらったからこそ、ミャンマーが好きになったように、この女性医師の診察を受けた妊婦は、日本が嫌いになってしまうかもしれないと思う。

日本にもミャンマーにも愛着があるマヘーマーさんは、2つの国のかけはしとなって、日本に暮らすミャンマー人の生活をサポートする。「私には、日本に使命がある。在日ミャンマー人にとってほっとする場所でありたい」。

マヘーマーさんがミャンマー人の価値観で運営しているJMCC。在日ミャンマー人にとってホッとできる場となっている。