■日本で暮らし続ける理由

インタビューの途中で、ミャンマーが民主化したNLD政権の時代もずっと、そして将来まで日本で暮らし続けようと思う理由を聞いた。「健康面と経済面かな」とマヘーマーさんは言う。医療面で日本は安心できるということとともに、「ミャンマーで稼ぐのは大変」と言う。

長く続いた軍事政権下で、経済活動が容易でなかったということとともに、ミャンマーの人材育成は大変だという。日本の仕事スタイルとミャンマーの仕事スタイルは違うのだという。

「良い悪いということではなく、ミャンマー人は、自分が楽しくなければ続けないんです。仕事中に携帯をいじるのもミャンマーでは普通のことだし、人前で怒られるのが嫌、厳しく育てられるのも嫌、その上、独立精神が強くて、育ててもあっさりとやめてしまう。JMCCのボランティアも、日本人は長くやってくれるけれど、ミャンマー人はすぐにやめてしまいます」。

在日ミャンマー人の本音の悩みを聞くことは、マヘーマーさんにとって大切な活動。それを受け止めるためにも、自然に触れてリフレッシュ。

一方で、おふたりから面白い話も聞いた。ミャンマーで成功しているレストランチェーン”Feel”では、カレン族の従業員を中心に雇っているという。寮に住まわせ、福利厚生も充実、会社として田舎の家族にも会いに行く、独立したい者にはのれん分けをさせるなど、まるで本当の家族のように従業員を大切にしているという。カレン族の真面目な気質もあるのかもしれないが、従来のミャンマースタイルとは少し異なる手法で、人材を育て、成功しているのだそうだ。

そんな人材育成の難しさもさることながら、「私たちには、日本で使命があるし、ふたりで一緒に暮らしていくことを考えたら、日本」とマヘーマーさんは言う。

子どもを持たない選択肢を選んだことについては、こんな風に話してくれた。

「私たちは自分たちが生きていくのでせいいっぱい。やりたいことがやくさんあるし、親として責任が持てないと思う。日本では1人の子どもを産み育てるのは大変なことです。ミャンマーでは、子どもは近所中でかわいがって、近所中で育てている感覚。姪っ子が田舎に帰省したときには、遊びに出かけるたびに、毎日違うドレスを着て帰って来るんです(笑)。子育ての環境も違いすぎるので」。

ミャンマー文化紹介イベントで伝統化粧「タナカ」を説明するマヘーマーさん。