職業柄、奉仕活動の機会が比較的多い貨物トラックの運転手。本業での賃金はどれくらいなのでしようか。

   雇われ運転手の場合、1回の仕事で、運送距離に応じた歩合制の賃金を得ることが多いようです。その相場は、車両の大きさに応じて差がありますが、1日以内で終わるような市内の運送ならば500チャットほど。長距離輸送の場合、目的地で積荷を下ろしてから別の貨物を積んで帰ってくるといった形の往復運送で、目的地までの距離が100マイル(約160km)くらいならば1500チャットほど、仕事に要する日数は2日間です。だいたいこのあたりが長距離運送における賃金の基準となるようです。よって目的地までが200マイルほどならば、その往復運送は3日がかりの仕事となり3000チャット、同様に400マイルならば5日がかりとなり6000チャット、といったあたりの額を得ることができます。このような長距離運送の仕事がたくさん入ってくれば、1ヵ月の賃金合計は3万チャットほどになります。しかし、多いのは市内運送の方で、長距離はだいたい1ケ月に3回程度。日によっては仕事が入ってこないこともあります。したがって、1ケ月の所得は、2万チャットを割るくらいが平均的な線だそうです。

   なお、既に述べたチョー免除に関わる証明書は、言うまでもなくトラックの所有者(経営者)の負担で取得されるものです。ただし、こうした証明書を取得していないトラックの場合、検問所でチョーの義務を課せられた際には、トラックの徴用と共にその運転手への勤労奉仕が義務付けられるので、その免除金については運転手自身の負担となります。

   以上のような労働環境のもとで働く貨物トラックの運転手たち。いろいろな意味でより安定した運転手業、ということを考えた場合、軍関係の「ミャンマー連邦事業ウーパイン有限会社」(通称「ウーパイン」)で働くことが、そのベストと考えられているようです。

   タンウー将軍(現ヤンゴン市における第2順位の裁判長)を中心に国防省の関係者によって1990年代後半に設立された「ウーパイン」は、退役軍人を含む軍関係者たちによって運営されています。マンダレービールや食用油などの製造、宝石類などの輸出、自動車・石油・軍需品などの輸入といった収益の高い分野の事業を幅広く展開、その利益は全国の軍に分配されています。

   ウーパインの運送部門で貨物トラックの運転を担当する従業員に対しては、月給制の賃金体系がとられています。その額は、車両の規模によって異なりますが、おおよそ1万5千~2万チャット程。数字だけの比較ならば、前述の民間における歩合制とほぼ同程度ですが、ウーパインには待遇面での利点があります。それは、専用の車両が割り当てられるということ。つまり、車両の管理が運転手自身に任されるため、運送の際に自分なりの工夫を凝らすことができるといいます。たとえば荷台に「ゆとり」が出るような積み方をすれば、そのスペースを活用した「相乗り」運送が可能となります。こうすることで、本業と同時進行的に副収入を得ることができるのです。また、ウーパインという軍関係の車両を運転しているのですから、それ自体が一種の奉仕活動ということになります。したがって、チョーの義務を科せられることはありません。