(※この記事は、2000年11月に掲載したものです)
この国では、テレビやラジオなどのマス・メディアに歌手が出演して何かしゃべるといったことはめったにありません。ゆえにファンにとっても、好きな歌手を目にする機会はなかなかありません。姿を見るならば、アルバムのジャケットや雑誌の写真。人柄を知ろうとすれば噂話しが最大の情報源。しかしキンマウントーの場合、写真や噂話しは無用です。それは「歌」が彼を余すところなく表現しているからです。
キンマウントーの音楽をひとことで言えば、「牧歌的」。そのスタイルは、欧米ポップスを基調とするフォーク・ロック調で、ビルマの伝統音楽ではありません。しかし、彼の歌には単なる欧米のコピーにとどまらない音楽性があり、ビルマ人にとってはそれが魅力。ほっとするような素朴なメロディーと温かみのある歌声は「疲れた心を癒してくれる」と彼の歌を愛する人々は言います。その表現手法が外国からの影響に基づいたものであっても、ビルマの人々に安らぎを感じさせるサウンドの中には、ビルマ人アーティストならではの音楽世界があります。
物静かで温厚な人柄のキンマウントー。その落着きに満ちた物腰と穏やかな口調は、まさに聴く者に安らぎを与える歌そのものなのです。