ビルマ・ロック界のヒーローとしてこの国の若者たちの間で大人気のレーピュー。そんな彼と会うべく自宅へ電話。ところがなかなかつかまらない。いるのは細君だけ。いわく「あの人がいつ帰ってくるかって?知りたいのは私の方だよ。」そして電話連絡を試みてから4日目、ようやくつかまったレーピューからは、インタビューへの快諾を得たものの、話題には釘を刺されてしまいました。
現在この国における出版や映画といった信条や表現にかかわる業界は、かつてないほど厳しく規制されています。音楽について言えば、業界にはシステム面での不備による“自由さ”(詳細は後述)があるものの、活動そのものは、基本的に一種の翼賛体制下で営まれています。ゆえに、ロック・ミュージシャンとしてはごく普通というか、むしろおとなしいくらいのレーピューですが、この「普通」さがビルマの現状では「異色」。だからこそ、海外でとりあげられることがほとんどないビルマの歌手の中で、彼は取材の的となることがあるのでしょう。つまり、おおかたの外国ジャーナリズムにとって、ビルマの歌謡曲など、そもそも興味の対象ではないということ。したがって「政治的なことは書かないでほしい」と彼が注文しても、結局その意思とは関係なく、望まぬ方向で記事が書かれてしまう。初めて会う人にも胸襟を開けて話しをするレーピュー。彼の人間的魅力にあふれるおおらかな人柄は、時に災いしてしまうようです。