■未知なる料理
「やっぱり辛いの?」
ミャンマー料理について、たびたびこうたずねられます。
日本で“エスニック料理”のひとつとされる東南アジアの料理。「トムヤムクン」という辛いスープによって知名度を得て以来すっかり日本に定着したタイ料理を始め、わが国では、この種の料理に「辛い」というイメージはつきものです。実際、「エスニック」という言葉自体が、本来の意味から飛躍して「辛い」と同義的にとらえられており、辛いものばかりではないタイ料理についても、とかく辛さが強調されがちです。
タイの隣国であるミャンマーの料理もそんなイメージの影響下にあり、タイと混同されやすいだけに「辛い?」と思われてしまうようです。ただ、一般的なレベルの認識でいえば、まったく想像もつかないといったところでしょう。1990年頃の『地球の歩き方』の中にあった「ミャンマーでしか味わえないミャンマー料理といったものは...少なく」との記述は象徴的で、その後、ミャンマー料理への認識は若干向上しましたが、一般的には依然としてほぼ未知の料理に近いと言っていいでしょう。(1997年10月7日記載)
さて上記は、今(2024年3月)から26年以上も前に書いた記事です。それから4半世紀以上経ち、日本におけるミャンマー料理の認知度は、全体的にはさほど変わっていないとはいえ、異文化や珍しい料理に興味のある方々の間では若干高まったと言えるかもしれません。ミャンマー料理店の数も、流動的ではありますが、全国に80~90軒ほどはあると思われます。そうした料理店の増加と伴って、日本で食べられる料理の種類もかなり増えてきています。(2024年3月29日追記)
そんなミャンマー料理について、まずはそのおおまかな全体像を簡単につかんでおきたいと思います。