ミャンマーでは食事の際、手、スプーン、フォーク、チリレンゲといったところがよく使われます。これらがいずれも優劣をつけられない同列の「道具」であり食事方法であるということは言うまでもありません。しかし、近現代史は価値観の支配をもたらしました。手食の文化を持つミャンマーでは、スプーンやフォークなどは副次的もので主要な道具は「手」ですが、これで料理を味わうのは家の中だけという道具の使い分けをしている人も少なくないようです。
さて、ミャンマー料理を食べる際の基本は、ご飯とおかずをよく混ぜることにあります。そもそもこれは手食の作法で、道具がスプーンに代わっても基本は変わりません。つまり、ミャンマー料理の食べ方を知る上で大切なのは、手食の仕方ということになるでしょう。作法としては指の第二間接までを使う、といったことを聞いたことがあります。実際、女性の場合はわりとそうしているようですが、男性の場合はその限りではないことが多いようです。いずれにしても肝心なのは、よく混ぜること。人のよって違いはありますが、ミャンマー人は食卓に並べられた数々のおかずを自分の好みに応じてご飯と混ぜて食べます。ご飯におかずの味を十分にからめてから食べる。いわば、これはご飯とおかずのアトウッのような状態といえるでしょう。
料理の総称としての「アトウッ(和えもの)」はミャンマー料理における脇役的存在と位置付けましたが、食べ方や調理法としての「アトウッ」(トウッの名詞形)、すなわち「和えること」は、ミャンマー料理の根幹といえるかもしれません。また、アトウッにおける酸っぱい味付けは、おかずの主役である「ヒン」が油の利いた食べ物だけに、極めて重要なのです。ヒンの「油気」とアトウッの「酸味」を大きな特徴とするミャンマー料理。両者をいかにバランスよく取るか。また、これらを自分の好みに合わせて、いかにおいしく「トウッ」するか。こういった点が、ミャンマー料理を美味しく食べる方法の基本と言えます。