絶品のトーフヌエ! その旨さはヤンゴンでNo.1

今や、ヤンゴンでシャンカウスエは珍しい料理ではありませんが、2000年代になったばかりの15年ほど前までは、市内に数軒しかないシャン料理店でしか食べられませんでした。

当時、そうした数少ないシャン料理店のひとつである「999」で腕を磨いたナムサン出身のコ・トゥンセイン氏が、夫婦で2006年に開業したシャンカウスエ専門店が「ドーシャンレー」です。

開業当時のコ・トゥンセイン夫妻
コ・トゥンセイン氏が腕を磨いていた当時のシャンカウスエ店「999」
今や「999」を超える味を誇るシャンカウスエ店「ドーシャンレー」

シャン料理の代表格シャンカウスエには、いろいろな種類があります。その一部をごく大雑把にまとめると、以下のようになります。

【麺の種類】
●サンズィー・・・粘り気のあるシャン米が原料
●サンブエ・・・インディカ種のビルマ米が原料
 ※さらにサンブエには、以下の2種類の製法がある。
  ●河粉・・・広東料理がルーツでベトナムのフォーに近い平麺
  ●餌絲・・・雲南料理がルーツで蒸した米餅を練って切り出したもの

【汁の種類】
●アイェー・・・汁あり
●アトウッ・・・汁なし ※意味は和えものだが、汁なしを指す。
●トーフヌエ・・・固める前のシャン豆腐

シャンカウスエは、シャン州の地方によって異なります。ヤンゴンでシャンカウスエとして知られているのは、北シャンのもの。北シャンのシャンカウスエは、麺の種類が「サンズィー」と「餌絲のサンブエ」です。

ザンズィー
サンブエ

コ・トゥンセイン氏夫妻の「ドーシャンレー」では、北シャンのシャンカウスエを全て食べることができます。今から10年ほど前、ヤンゴンで「サンズィー」というもちもちしたシャン米の麺は、まったくと言っていいほど食べることができませんでした。そうした中で、ドーシャンレーでは、いち早くサンズィーをメニューに取り入れ、ヤンゴンで本格的なシャンカウスエを食べられる店となりました。

今では、ヤンゴンでも「サンズィー」を食べることができるようになりましたが、このドーシャンレーには、他店にはない旨さがあります。それは、絶品の「トーフヌエ」です。

トーフヌエは「温かい豆腐」という意味で、シャン豆腐の原料であるひよこ豆のペーストを使ったあんかけ風の麺料理。味付けとして、チャーニョウという甘い醤油などが使われますが、この店では、常連客は「チャーニョウは入れないで」と注文します。なぜなら、この店のトーフヌエは、その味の決め手であるひよこ豆のペースト(温かい豆腐)自体が絶品だからです。他店では、チャーニョウを入れることで味を完成させており、この店でもチャーニョウは入れるには入れますが、店主のコ・トゥンセイン氏はこう言います。

「まずはチャーニョウを入れないのを食べてみて」

それくらい、ペースト状の温かい豆腐本来の味に自信があるのです。そして、一度この店のトーフヌエを食べると、2度と他店でトーフヌエを食べられなくなります。

黒っぽいのがチャーニョウ。通常はこれくらい入れる。
ドーシャンレーでは、チャーニョウ入れなくても、旨みがたっぷり。

そんなドーシャンレーは開業してから約13年。ヤンゴンの名店と言ってよく、特にトーフヌエは午後5時の開店から3時間ほどで売り切れになる程ですが、店構えは街角の屋台。ゆえにヤンゴンの観光ガイドブックには載っていません。まさに地元の人たちだけが知る本当に美味しい店。こうした店にこそ本場の味の醍醐味があります。お客さんでいつも賑わっているこの店では、座って食べられない時もありますから、パーセー(持ち帰り)で買っていくお客さんもたくさんいます。

ドーシャンレー。ヤンゴンで最もトーフヌエが美味しいシャンカウスエ店です。

夕方5時の開店から、手を休めることなく、麺を茹で続けます。
近年は、評判を聞きつけて外国人客も訪れます。