ウ・アンジー、日本テレビの歌番組「歌のスターレット」に出演
1961年8月8日(火)または15日(火)

カラボー歌謡の伝説的歌手ウ・アンジーは、一族のファミリービジネス「BT Brothers Coffee」のためにたびたび来日しています。初回の1953年に続き、1955年5月から6月にかけて来日。そして3度目の1961年7月末から10月までの滞在期間中に、「歌のスターレット」というテレビの歌番組にゲストとして出演しました。

歌のスターレットというのは、日本テレビで毎週火曜日の12時15分から25分間というお昼休みの時間帯に放送されていた番組。NHKのど自慢の民放版といった感じで、作曲家の服部良一などを審査員として、素人が歌声を披露するという内容。1961年4月から始まり、同年9月に終了しました。

その中でウ・アンジーがどこで出演したのでしょうか。昨今はかなりマイナーな情報もインターネットから入手できる時代になっていますが、この60年近くも前の短命番組については、情報が皆無。日本テレビに問い合わせても、ミャンマー人歌手出演の記録はないとのこと。ただ、この番組についての社内記録に手掛かりがありました。

そこには、司会者、審査員、ゲストなどの項目があり、ウ・アンジーの滞在期間中に絞って見ると、8月8日と15日だけゲスト名の記載がありません。当時、テレビ放送は生放送の時代で、技術的・コスト的に録画番組が可能となって増えてきたのは1980年代以降。よってウ・アンジー出演はこの両日のうち、どちらかに間違いありません。

番組中、流暢な日本語で応じるウ・アンジー(中央は夫人のドー・メーニュン)

番組の中でウ・アンジーは、司会の三和完児から特別ゲストとして、妻のドー・メーニュンと共に紹介され、ふたりで登場。まずはカラボーの名曲「トゥーガレー (သူကလေး)」を披露します。このように日本のお茶の間にビルマ語の歌謡曲が放送されたというのは驚きです。続いて、昭和歌謡や小唄を日本語で、ということで、まずはウ・アンジー本人が日本語習得のいきさつを堪能な日本語で説明。そして肝心の歌はといえば、何も知らなければ、これをミャンマー人が歌っているとは誰も思わないと言えるほどの完璧さ。まさに圧巻です。

ミャンマー語の「トゥーガレー」に続き、日本の曲は霧島昇の「誰か故郷を想わざる」、小唄勝太郎の「三階節」などを披露

この時も、もともとコーヒービジネスのための来日で、日本のインスタントコーヒー技術の導入が目的だったそうです。ただ帰国後は、日本のテレビに出演したことが話題となり、国営ラジオ放送のミャンマー・アタンで1961年11月20日に特集され、番組で歌った時の音声が放送されました。

ちなみにインスタントコーヒー技術導入は、翌1962年のクーデタによるビルマ式社会主義体制へ移行でBT Brother Coffeeの設備の多くが接収され、実現しませんでした。

日   時1961年8月8日(火)12:15~12:40
または
1961年8月15日(火)12:15~12:40
会   場読売会館TVホール  地図はこちら
東京都千代田区有楽町一丁目11番1号 読売会館7階

岩田喜代造指揮スターレットオーケストラ

[司会]三和完児
[審査員]大村能章、レイモンド服部、飯田景応、服部良一、葦原邦子