自身が所長を務めるJMCCで、ミャンマー人のボランティアの方々やビルマ語の生徒さんたちが祝ってくれる誕生日。
雪が降って大喜び。自宅前にて。
■大好きなミャンマーのために、そして自分のために

ミャンマーの好きなところは、人と人の距離が近いこと。初めて会う人も家族のように大切にする心の豊かさ。「日本も昔はそうだったかもしれませんが、今は、自分のことしか考えない人が多いように感じます」。ミャンマーの人は常に助け合い、世界寄付指数(world giving index)では何度も世界1位となるほど、日常的に寄付の習慣がある。

クーデター下でみんなが大変なときには、路上に不思議な食糧市が開かれているのをSNSでよく見かけた。野菜や魚が山積みにされているが、お金の授受はない。野菜のそばのカードには手書きで、「必要な人は持っていってください。不要なものがある人は寄付してください」と書かれている。最近も、母国が大変なときでも、日本で災害があると、ミャンマー人はいつもいち早く、寄付してくれる。「そういうミャンマーの寄付文化が大好きです」とマヘーマーさんは言う。

在日ミャンマー人の心のよりどころとなっているミャンマー僧が住職の上座仏教僧院にて。

また、ミャンマー人は家族が第一で、家族のためなら自分が死んでもいいと思う人が多いという。ミャンマーではまだ「死」が身近だ。病気や事故も多く、クーデターの中で死んでいく人も多い。でも、信仰心が篤く、生まれるものは皆いつか死ぬという真理が身についているので、日本人のようにマイナス面を多く考えることなく、楽観的で、なるようになると考える人が多い。そういうところも好きなところだ。

最後にマヘーマーさんに夢を聞いた。彼女はしばらく考えて、JMCCを続けたい、だから後継者を育てたいと言い、そして「少し自分の時間が欲しい」と笑った。

コロナ禍で、オンラインでの活動が中心に。高田馬場のJMCCで日本人とミャンマー人が直接交流する機会は減ってしまったが、JMCCの活動への参加者は、ミャンマー本国など遠方にまで拡大。

詳しくは書かないが、金銭的にも精神的にも、若い頃からミャンマーの家族を支え続けてきたマヘーマーさん。「自分のために生きているとは言えない」と言う。でも、自分に余裕がないと人を助けることはできない。だから、今、時間があればやりたいことは、健康と美容の知識を深め、からだを大事にすること。そして、その知識とノウハウをミャンマーの人にも伝えたいと言う。

「家の周りに自然が多いので、ウチョー(落合さん)が退職してから毎朝、散歩をするようになりました。日本は四季がはっきりして、自然豊かで本当にきれいな国。野菜は季節ごとに変わりますし、日本の健康的な生活を自分も身につけ、実践して、そしてミャンマーに伝えたいと思います。ミャンマーの人は健康の知識が乏しくて、今、コロナが蔓延しても隔離もせず、患者の手を握って励ましたりして、みんなが感染してしまう。心配です。正しい知識を伝えたい」。

日本の良さをミャンマーに伝えたいし、ミャンマーの魅力を日本に伝えたい。想いを語るマヘーマーさんの言葉は熱く、とどまるところを知らないようだった。

取材:2021年7月22日(ご自宅で)

取材当日、自宅にて。

<プロフィール>
Ma Hay Mar(マヘーマー)
中央大学商学部商業貿易学科卒業。高田馬場にあるNPO法人日本ミャンマー・カルチャーセンター(JMCC)所長。ミャンマー語教室やミャンマー文化に触れるイベントなどを主に日本人向けに提供するほか、在日ミャンマー人向けに日本語クラスや子ども会などの場を提供。在日ミャンマー人と日本社会とのパイプ役となっている。私生活では、日本人の夫、落合清司さん(ミャンマー名:ウチョー)と、川崎市内の自宅で、郊外の自然を楽しみながら暮らしている。