5スター ミャンマー(2018年11月15日開店)

■ゆったりとした雰囲気の中で味わう絶品マンダレー料理

マンダレー出身で来日30年のマ・スウェスウェさんご夫妻が2018年に開店した「5スター ミャンマー」は、実に広々としたログハウス風のお洒落なお店。本国で有名な避暑地メーミョー(現ピンウールイン)の別荘をイメージしてデザインしたそうです。店内には、客席が64もあるダイニングスペースをはじめ、サラダバーとドリンクバー、小ホールなどが設置され、更にミャンマーグッズの展示販売コーナーまであります。

客層のメインは日本人とのこと。とりわけ女性客を意識した店内の装飾は、所々に配置された伝統工芸品がミャンマーの雰囲気をお洒落に漂わせ、とても良い感じです。

ミャンマー料理初体験というお客さんが来ることも少なくないこの店では、第一印象は重要です。そこでお勧めのメニューですが、日本人にとって違和感のない美味しさの料理が揃っています。とりわけ人気ナンバーワンの「ウェッターヒン(豚肉のカレー風煮込み)」は、絶品と言えるほどの旨さ。そして特筆すべきは、このウェッターヒンが、日本人向けにアレンジされていない、本場の味であるという点です。

皮付き三枚肉を使った絶品ウェッターヒン

ただ「本場」については、ミャンマー料理は、家庭料理が基本で地域や作り手によって異なるので、その味はさまざまで、ウェッターヒンもヤンゴンとマンダレーとでは違いがあります。

なお、ここで料理名につく「ヒン」というビルマ語について、便宜上「カレー風煮込み」と訳していますが、元々は「おかず」という意味で、具体的には「煮込み料理」の類を差しています。その多くは「カレー風」ですが、そうでないものも一定程度あります。ただミャンマー料理は日本で馴染みがありませんから、まずはこのようにあらわすのが妥当と考えた次第です。

それを踏まえてウェッターヒンについて言及すれば、ヤンゴンで一般的なものは、香辛料が若干利いて。油分が多くてこってりした感じなので「カレー風煮込み」と言えます。しかしマンダレーでは、料理店での主流は、香辛料をほとんどあるいはまったく感じない、ちょっと甘めで優しい味のもの。例えると日本の肉じゃがに似た味なので、これなどは「カレー風」とは言い難いでしょう。

さてそこで、5スターの絶品ウェッターヒンですが、これがずばりマンダレー風。上記のことを知らないと、その食べやすい美味しさから、日本風にアレンジされたものと勘違いされるのではないでしょうか。しかし、正真正銘、本場の味なのです。

皮付き豚の三枚肉をホロホロになるまでしっかり煮込んだウェッターヒン。そのタレは、日本の肉じゃがの旨みを凝縮したような味。濃厚でトロリとした外観はカレー風ではありますが、ひと口食べれば、予期せぬ味とその美味しさにびっくり。どこか懐かしさを感じる旨みがとにかく濃厚で、もうご飯が止まりません。一度食べたらやみつきになる味は感動的です。

そもそもミャンマー料理というのは、最大都市ヤンゴンではなく古都マンダレーこそが本場です。そんな食文化の中心地随一の名店に「エイミィッター」という老舗のミャンマー料理店があります。5スターのウェッターヒンは、まさにこの名店の味。ですからその美味しさは、日本のミャンマー料理店の中でも抜きん出ています。

マンダレーの老舗ミャンマー料理店「エイミィッター」のウェッターヒン

ミャンマーの食文化において、豚は肉の代表格と位置付けられており、それを使ったウェッターヒンには、さまざまなバリエーションがあり、マンダレーで主流の味付けは「アチョーヂェッ(甘ごしらえ)」と言われています。実は日本でこれを食べられるミャンマー料理店はほとんどありません。たいていの店ではヤンゴンなどで一般的な「カレー風」のもの。それとは異なる食の本場マンダレーの味は意外にも盲点となっているようで、そういう意味でも5スターのウェッターヒンは、美味しいだけでなく本場の貴重な味を体験できる価値ある一品です。

ウェッターヒンだけでなく、他にも美味しい料理がたくさんあります。色付き炊き込みご飯の「ダンバウ(ミャンマー風ビリヤニ)」や漬け茶葉の和えもの「ラペットウッ」などが人気。これらを筆頭に、ヒン(カレー風煮込み)、アトウッ(和えもの)、アチョー(炒めもの、揚げもの)など、各種の代表的料理を一通り楽しむことができます。

また表看板はミャンマー料理店ですが、タイ料理のメニューもそろえており、こちらは専門のタイ人シェフが担当。ミャンマー料理も食べられるタイ料理店は都内で見かけますが、これとは逆のパターン。そしてサラダバーやドリンクバーなど他店にはないユニークさが際立っています。

ドリンクバーとサラダバー(※現在、サラダバーはコロナ対策により一時休止)

来日30年のオーナーご夫婦には長い間「ミャンマーのことを日本人に知ってほしい」という想いがあり、それを実現したのがこの「5スター ミャンマー」。ゆえに料理だけではなく、民族舞踊やビルマの竪琴演奏会といった伝統文化を披露するイベントも催しています。

まだまだ知名度の低いミャンマー料理ですが、この店を一旦訪れたらまた食べに来たくなります。5スターは、多くのリピーターが集う、魅力いっぱいのお洒落で美味しいお店です。

※店の場所(地図)はこちら

(2020年6月取材)

店名5スター ミャンマー(2018年11月15日開店)※紹介記事
所在地埼玉県新座市中野1-10-20
電話番号050-5596-9310、048-424-7733
営業時間10:30~15:30、17:00~22:30
休業日火曜日
ミャンマー料理店の中では、日本最大と思われる店舗の規模。
ウェッターヒンの付け合わせとしてお洒落に盛り付けられたラペットウッ(漬け茶葉和え)など。